人間ドックということで、待ち時間に読書をすべく、アッバード、ベルリン・フィルの挑戦を持参。アバドがベルリンフィル芸術監督就任以来、どのような方針で運営してきたかが綴られている。
「ツィクルス」という音楽を推進力として広く芸術全体を結びつけることを企画。シーズンごとに、一つの題材、一人の芸術家、一つの概念を核として演奏会のプログラムを組み、音楽そのものとはあまり関係ないテーマも核とする等、新たな試みを実施した。
プロメテウス、ヘルダーリン、ファウスト、ギリシア神話、シェイクスピア、ベルク=ビュヒナー、等。
ところで、文化についてのアバドの考え方が興味深いので引用しておきます(ちょと長いですが)。
68ページより
「文化を最も信頼している国が最も豊かであるというのは偶然ではありません。というのは、文化の発展のために最も良質の人的資源、経済的資源、天然資源を投入している国家は、結果として、豊かさをも生み出すからです。---(中略)--- 残念ながら、一般的には逆に考えられています。つまり、文化が発展し普及することを可能にするのは豊かさだというのです。まるで、文化とは贅沢なもの、見せびらかすものであるかのように。要するに、私は一般に流布している見解をひっくり返さざるを得なくなったのです。文化を生み出すのが豊かさではなく、豊かさを生み出すのが文化なのです。現にボローニャ、パルマ、レッジョ・エミーリアのような都市では、芸術が文化であるのと同様に、教育、政治、経済も文化なのですから。」
104ページより
「文化というものは、私達が仕事の世界を改革したり、ものごとを深く考えたり、社会に信用を生み出したり、社会的・経済的生活を営むためのネットワークを作り出したりすることを可能にします。それとは逆に、強い経済力がすでにあって初めて文化に投資することが出来るのだと考えられがちです。それはちょうど、ある国で素晴らしい音楽をいろいろと聴くことが出来るのは、偉大な独奏者がいるからだと考えるようなものでしょうが、本当は逆なのです。つまり、偉大な演奏家や偉大なオーケストラが生まれるのは、その社会が文化的に豊かだからなのです。---(中略)---。政治家はしばしばこの理屈がわからないふりをします。というのも、このことを認めてしまうと、これまでとはまったく異なる方針をとらざるを得なくなるからです。」
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